CPFF、PDCFと続けても、結局、最後は緊急景気対策なのか

我々は前回のレポートで、市場は米国の連邦準備制度理事会(FRB)に、金利見直しなどより信用市場に直接関与することを望んでいる、と論じた。さらに、その具体的な進め方の難しさについても強調しておいた。FRBは確かに市場の懸念に対し、すぐさまCPFF(コマーシャル・ペーパー資金調達支援措置)の再投入で対応する。これは、元々は2008年のリーマン・ショック時に始められた手段である。FRBは、少なくともシングルAマイナス、シングルPマイナス、シングルFプラスの格付けの、未払いになっているコパーシャル・ペーパー(CP)を、スワップ翌日物金利に200bp上乗せした利率で相当規模、購入するものと思われる。これは、米国の企業(外国企業の米国子会社を含む。)を最後は、なんとかFRBの金融支援にすがれるようにしようという内容である。そして、信用条件をめぐる市場の懸念を和らげる一助になるに違いない。

CPは、米国企業(金融機関および非金融機関を含む。)が用いる、通常は満期が3か月くらいの短期の資金調達手段であり、無担保のものも資産担保のあるものも両方ある。現時点の市場全体の発行残高は約1.1兆米ドルである。米国財務省はFRBに対して、潜在的な信用損失に対する保険として、最大で100億ドル供給するものと思われる。

コマーシャル・ペーパーの残高

10億米ドル

市場には動揺があるため、FRBはCPを場合によって直接、購入するかもしれない。FRBは、単に少なくともシングルAマイナス、シングルPマイナス、シングルFプラスの格付けのCPを購入するだけのことではあるが、条件とされたこれらの格付けは、現実には米国のCP市場の大多数を意味する。2008年当時、条件とされた格付けも、当時のマーケット全体のほぼ95%を示していた。

2008年当時、CPFFの総資産額は当初、急速に拡大して、第1週目の取引で1,440億ドルに達した。1か月経過時点で総資産は2,930億ドルと2倍を超え、年末には3,330億ドルとなった。CPFFのピークは2009年1月の第3週、最初の発行からちょうど3か月が経過した時点で、SPVでの保有額は約3,500億ドルに達した。2009年を通した動きで見ると、CPFFの利用は一貫して減少を続け、その年の12月には約100億ドルに達した。

コマーシャル・ペーパー資金調達支援措置の発行残高

10億米ドル

Unsecured commercial paper

無担保コマーシャル・ペーパー

Asset-backed commercial paper

担保つきコマーシャル・ペーパー

Source: Federal Reserve Bank of New York.

資料出所:FRBニューヨーク連銀

リーマン・ショック当時、CPFFは実際にCP市場を安定化させる効果があった。CPFFがピークであった2009年1月時点で、CPFFは市場全体の残高の20%以上を買い上げていた。それが制度の期限となる2010年2月1日までには、同支援措置は市場発行量の1%を占めるにすぎない状況になっていた。CPFFの自主返済方式という特徴は、CP残高が2009年を通じて着実に減少していったところに現れている。

コマーシャル・ペーパー総発行残高

10億米ドル

Percent

CPFF launch

CPFF開始時点

Total outstanding in CPFF (Left scale)

CPFF総買上残高(左目盛)

Total outstanding in market (Left scale)

市場に占める総残高(左目盛)

Source: Board of Governors of the Federal Reserve System

資料出所:FRB理事会

Note: CPFF is the commercial paper funding facility

注:CPFFとは「コマーシャル・ペーパー資金調達支援措置」のこと。

FRBは新たに、PDCF(政府公認ディーラー信用支援措置)という支援制度も導入する。これは政府公認ディーラーのみが利用可能な制度で、投資適格債、ABS、MBS、CP、さらには米国株式などを担保に、90日までの短期間、年利0.25%でFRBから資金調達ができる、という制度である。現在、FRBは株式を担保物件と認めていない中では、これによって米国株式はわずかに魅力を増すかもしれないが、政府公認ディーラーは通常、大手銀行であるため、従前も指摘したように、実際のところ短期の資金繰りに困っているわけではない。

そんな中、スティーブン・ムニューシンが、「米国民にただちに小切手を送る考えだ」と述べた。これは、共和党上院議員のミット・ロムニーが、すべての米国成人に1,000ドルを支給すると提案したことに呼応するもので、後者の提案は約2,500億ドルの財政コスト増となる。一方、民主党下院議員のティム・ライアンとロー・カンナは、年収65,000ドル以下の米国人すべてに1人少なくても1,000ドルを支給し、子供のいる一部の家族には6,000ドル支給すべきだ、と提案している。

ムニューシンの提案は、小切手の方が1,000ドルよりも額が大きくなり得ることを示唆したものだが、受給者が米国の成人全員なのか、子供も含まれるのか、それとも一定の所得制限がかかるのか、などといった点については、明らかにしていない。ただ、「年収100万ドルを稼ぐ人にチェックを送る必要はない」と話していることから、一定のミーンズ・テストを経た人たちを対象に考えているのかもしれない。

これらは、巷間取りざたされている、トランプ政権が目指す8,500億ドルにおよぶ緊急景気対策の枠外の、広義の支援かもしれない。一方、一部の報道によれば、給与所得者に対する税制優遇措置が含まれる、とも聞く。また、ホワイトハウスは、この景気対策案を今週中に議会の承認を取ろうとしている、とのうわさも流れる。別のいいニュースとして、民主党上院議員は独自に7,500億ドルからなる景気対策案(医療の受入れ能力拡大、失業給付その他、家庭向けの直接給付、産業界と医療業界に対する支援等を目的としたもの)を3月16日、発表した。議会がこれに対して迅速に対応できるかどうかが注目される。

これは、レイ・ダリオが金融政策第3弾と呼んでいる、金融政策と財政政策を組み合わせた政策の始まりかもしれない。米国は順調に歩みを続けてきている。ムニューシン提案の詳細はまだわからないが、あと2週間もすれば中身が明らかになってくるかもしれない。

これら諸々の取組みは、経済システムにより多くの流動性を流し込むもので、最終的にはビットコインの助けになることだろう。我々はビットコインにとってよい兆候と見ている。