決済サービスを通じた暗号資産取引

重要ポイント 

  • PayPalが3億人以上のアクティブユーザー向けに暗号資産の直接売買を開始するか
  • 暗号資産取引は、PayPalやCash App等の決済プラットフォームにとって儲かるビジネス

デジタル通貨ニュースメディアのCoinDeskによれば、PayPalは自らのユーザーへの暗号資産の直接売買と保管のための内蔵型ウォレット機能を、遅くとも3ヶ月以内に展開することを計画している。記事では、PayPalが「流動性を確保するために複数の取引所と」協業し、中でもCoinbaseが有力候補に挙がっていると報じた。米国で流行している送金サービスのVenmoも、新たなビジネスの主導権を握るべくPayPalと争っていると噂されている。

もちろん、暗号資産業界にはすでに主導権を持つ決済サービスが存在する。例えば、Square, Inc.が開発したP2P(ピアトゥピア) 決済サービスのCash Appだ。Cash Appは、2017年第4四半期から暗号資産分野を開拓し、2020年第1四半期には取引量が40,000 BTC近くまで増加して、一時は世界最大となったP2P暗号資産取引所LocalBitcoinsと肩を並べた。

出典: Square, Inc.、Bybit Insight

Squareのビットコインの収益は総取引額であることには、注意が必要だ。実質の収益は粗利益であり、2020年第1四半期は約670万ドルである。

出典: Square, Inc.、Bybit Insight

粗利益の貢献は限られているものの、ビットコインサービスの純利益の貢献は非常に著しい。Cash Appはビットコイン取引に2.2%の手数料を課しているが、発生するコストはごくわずかだ。暗号資産売買のコストは主に、取引手数料と保管料から構成される。Coinbaseの大口トレーダーの取引手数料は、メイカーでほぼゼロ、テイカーで0.04%と低い。Coinbaseの保管料は、年間0.5%である。

分かりやすくするために、ビットコインサービスのコストがゼロであると仮定しよう。この前提のもとで、Squareの2020年第1四半期における営業利益総額の17%が、ビットコインの売買から生じたものである。大規模な顧客基盤を持つすべてのフィンテックの大企業にとって、ビットコインサービスの提供は魅力的で利益を生むビジネスモデルだ。

出典: Square, Inc.、Bybit Insight

Cash Appのユーザー基盤は、3000万人をやや下回ると予想され、一方顧客数が最大のCoinbaseはちょうど3000万を超えるアカウントを有している。では、PayPalはどうだろうか? 

2020年3月末時点で、PayPalは3億3200万のアクティブアカウントを有し、このうち2500万が法人アカウントである。そして4月には740万の新たなアクティブアカウントが増加した。アクティブアカウントとは、PayPalや提携プラットフォームで直接登録し、過去12ヶ月間にPayPal、PayPal Credit、Venmo、Braintree、Xoom、iZettle、Honey等のPayPal決済プラットフォームで取引(ゲイトウェイ限定の取引を除く)を完了したアカウントを指す。

出典: 20Q1 Investor Presentation、PayPal

暗号資産サービスの収益性はともかく、PayPalが暗号資産ビジネスを視野に入れていることは驚くには当たらない。デビッド・マーカス氏はPayPalの社長だった時期から、すでにビットコインの熱烈な愛好者だった。2013年にマーカス氏は、ビットコインについて「商業に大改革をもたらす可能性が高まる」と予言している。彼の考えは時代よりずっと先を行っており、そして7年後、PayPalはついに自らのアカウントをビットコインにつなげる準備ができたようだ。徐々に歩みを進めたPayPalは2018年に、CoinbaseからPayPalアカウントへの法定通貨の出金に同意した。最近PayPalは、ブロックチェーンへの関心を度々示し、この分野の専門家を雇い入れている。

噂が本当であれば、人気決済サービスの暗号資産への進出は、確実に業界の流れを一気に変え、幅広い受容を促すことは間違いない。