CBDC戦線における巨人たちの戦い

重要ポイント  

  • 世界の中央銀行の80%が、デジタル通貨の導入について検討を進めている
  • G7が中央銀行デジタル通貨(CBDC)の発行に向けて連携する計画、DCEP実証試験を開始した中国に対抗しデジタル通貨競争が激化
  • 米国は中国のデジタル支配への対抗を決定、デジタルドルの実行可能性について議会が頻繁に公聴会を開催

CBDC(中央銀行デジタル通貨)戦線の活発な競争に乗り遅れまいと、米国議会は6月中旬から7月中旬にかけて数回の公聴会を開催し、デジタルドルの実行可能性について討論を行った。ドルを裏付けとするデジタル通貨の構想は、2019年のリブラに関する議会の公聴会で主要メディアの注目を集め、フェイスブックは通貨バスケットと商品により裏付けられた新しいタイプのアカウントのデジタルユニットを提案している。

今年初めに国際決済銀行が行った調査では、世界の中央銀行の80%がデジタル通貨の導入について検討を進めているが、日常使用における初期段階の技術を実証するためのパイロットプロジェクトを計画しているのはわずか10%だった。例えばリトアニア銀行は2020年7月に、ブロックチェーン技術によって作成された24,000のデジタルトークン「LBコイン」を発行。LBコインは直接中央銀行で、または民間のブロックチェーンネットワークで直接交換することができる。LBコインの発売は、リトアニアを法定デジタル通貨の開発の最前線へと押し上げた。

リトアニアのデジタルトークンの実物版銀貨は、独立宣言に署名したメンバー20名のいずれかの署名が添えられ、€19.18という型破りな単位となっている。

出典: Reuters 

同様に中国の中央銀行も、少なくとも2つの主要都市でデジタル人民元(DECP)システムの試験を開始し、CBDCの戦いで多くの競合相手の機先を制した。試験は徐々に本格化し、中国の現状の金融操作を変換するDCEPの展望を示し始めている。8月2日のThe Global Times の記事によれば、中国銀行の元副総裁は、デジタル通貨の急増により法定通貨に取って代わり、幣制改革が行われると力説した。

米国の政策立案者たちは、自国通貨をデジタル化するというアイデアも温めている。しかしながら昨年の議会の公聴会以降にリブラが直面している、増え続ける規制上のハードルからも明らかなように、導入プロセスは遅々として進んでいない。

早くから暗号資産を推奨している米CFTC元会長のChristopher Giancarlo氏は、連邦準備制度によるデジタルドルの発行について熱心に語った。CFTCを離れた後、Giancarlo氏はデジタルドル財団を設立し、アクセンチュアとの提携により、最終的に「世界全体に恩恵をもたらす」米ドルのトークン化を推進している。財団は2020年5月に最初の白書を発表し、デジタルドルの緊急の必要性について詳しく述べ、世界の基軸通貨としての米ドルの地位を支えるポテンシャルを具えているとした。デジタルドルはデジタル通貨の世界で徐々に現金通貨の特徴を見習い、中央銀行の資金や決済へのより高いアクセシビリティを提供することができるようになり、それによって処理時間を短縮し省コスト性を改善する。

CFTC前会長のJ. Christopher Giancarlo氏、 イングランド銀行での記者会見

出典: Bloomberg Finance

提案されたデジタルドルは現在の二層の流通構造を維持し、商業銀行(と当局が認めたFRBとの仲介的な役割を果たす金融機関)が準備金とデジタルドルを交換して、エンドユーザーに流通できるようにする。

出典: The Digital Dollar Project

デジタルドルプロジェクトは、綿密に設計されたインフラとプライバシー保護手段の細心の遂行により、米国の新たなCBDCが米国のコアバリューを永続させるはずだとしている。

白書は米国政府へ、グローバルな革新プロセスにおいてどんな役割を演じ、そのコアバリューを将来のシステムの原理や設計にどの程度まで組み込むか、しっかりと考慮するよう強く促している。規模とプログラマビリティにおいて絶えず進化する競合相手と肩を並べるため、今後は金融システムの抜本的な転換が必要になる。白書は未来の基軸通貨を、デジタル的価値の世界を評価し、支え、処理するデジタルトークン化された通貨として描いている。

Giancarlo氏が自身のアイデアを米国議会で提案した際、デジタルドルのコンセプトは新たなデジタル戦線を掌握するための潜在的な武器としてのものであった。今のところはまだ、貧困を根絶し新型コロナウイルス感染拡大期間の財政パフォーマンスを向上するための、米国の決済インフラの現代化の手段として理解されている。

この多極性のグローバルな金融システムの中で、通貨のデジタル化はおそらく経済的な成功の決定的要素となる。9月以降に延期されたG7サミットの議題に、この分野でのCBDCの最新情報の共有が含まれていることは驚くに値しない。これらの討論は、中国元を用いて現在実証試験中のCBDC研究における中国の影響力の増大と、ドルの支配への手ごわい挑戦の姿勢を見据えたものである。

中央銀行のデジタル通貨の戦いは、デジタル通貨に関する大衆教育をさらに促進し、次に暗号資産の導入を加速させる可能性がある。これは長い目で見れば、暗号資産の世界に著しい恩恵をもたらすだけでなく、CBDCの導入により異なるタイプの暗号通貨に対する互換性を具えることでデジタルインフラの改善につながる可能性もあり、暗号市場に足を踏み入れる際のハードルがより低くなる。